映画と小説、どちらが衝撃的？『イニシエーション・ラブ』徹底比較＆解説

はじめに

『イニシエーション・ラブ』は、乾くるみが2004年に発表した恋愛ミステリー小説です。「最後の一文を読んだ瞬間に、物語がひっくり返る」という斬新な仕掛けが話題となり、多くの読者を驚かせました。

2015年には松田翔太、前田敦子主演で映画化され、原作のトリックを映像ならではの方法で再現。今回は、小説・映画の両方を含めて本作の魅力を徹底解説していきます。

▶ 関連人気記事（内部リンク）

物語は「Side-A」と「Side-B」の二部構成で進行します。

Side-Aでは、1980年代の静岡を舞台に、さえない大学生の「僕」（鈴木）がマユという女性と出会い、恋愛関係に発展していく過程が描かれます。初めての彼女に舞い上がる主人公の姿は、甘酸っぱくもリアルな青春ラブストーリーです。

Side-Bになると、物語の雰囲気が一変。就職を機に遠距離恋愛となった二人の関係は微妙に変化し、鈴木の周囲には新たな女性の影もちらつきます。やがて、ラストで衝撃の真相が明かされることになります。

本作の最大の魅力は、読者が完全に騙される“あるトリック”にあります。物語の最後の一文を読んだ瞬間、それまでの全ての認識が覆るのです。

『イニシエーション・ラブ』は、視点や時系列のトリックを巧みに用いることで、読者の先入観を利用してミスリードさせます。

例えば、読者は「Side-AとSide-Bの主人公が同じ人物」と思い込んで読み進めます。しかし、ラストの一文で明かされる真実は、「Side-AとSide-Bの『僕』は別人」という衝撃的なもの。

実は、マユは二人の「僕」と付き合っており、読者はそれを一人の人物として誤認していたのです。この仕掛けにより、物語全体がまるで違った意味を持つようになります。

映画版（2015年）では、

映画ならではのアプローチとして、視覚的にトリックを再現。特に、ラストの種明かしシーンでは、映像の工夫によって観客が「あれ？」と違和感を覚えるように作られています。

映画版では原作にはないオリジナルの要素も加えられていますが、基本的なトリックの構造は踏襲されています。そのため、映画を見てから原作を読むと、また違った視点で楽しめる作品になっています。

『イニシエーション・ラブ』は、単なる恋愛小説に見せかけて、ミステリーのトリックを巧みに取り入れた点が画期的でした。恋愛小説の読者とミステリー好きの両方を惹きつける内容になっており、その斬新な仕掛けが大きな話題となりました。

また、80年代の静岡というレトロな舞台設定が、ノスタルジックな雰囲気を醸し出している点も特徴的です。